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ビル管法とは?対象となる特定建築物や建築物環境衛生管理基準を解説
ビルや施設を管理していると身近な「ビル管法」ですが、改めて確認しておきたい方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ビル管法について、対象となる建築物や管理基準など基本的な事柄を分かりやすく解説します。
ビル管法とは
ビル管法(ビル管理法)とは、不特定多数の人が利用するビルや施設を衛生的な環境に保ち、利用者が快適かつ健康に過ごせるようにするための法律です。
正式名称は「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(略称:建築物衛生法)といいますが、長いので、ビル・施設管理の現場ではよく「ビル管理法」または「ビル管法」と呼ばれます。
「ビル管法」と「建築物衛生法」の違いを調べる方も多いですが、呼び方が違うだけで同じ法律です。
ビル管法では、対象となるビルや施設を衛生的な環境に保つために、空気や水などを快適で安全な状態にする基準や必要な対応が定められています。
ビル管法の対象となる特定建築物
ビル管法で定められた管理基準に従って管理維持を行わなければならないビル・施設は「特定建築物」と呼ばれています。
建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令第1条では、以下にあてはまる建築物が「特定建築物」であると定められています。
- 次の用途に使われる部分の延べ面積が3,000平方メートル以上の建築物
興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、遊技場店舗、事務所(2)で例示されていない学校(研修所を含む)旅館- 次の用途にのみ使われ、延べ面積が8,000平方メートル以上の建築物
幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校、幼保連携型認定こども園
上記にあてはまるビル・施設では、後述の建築物環境衛生管理基準に従って維持管理を行い、ビル・施設の環境を衛生的に保たなければなりません。
また、上記にあてはまらない建築物であっても、多くの人が利用する建物の場合は、建築物環境衛生管理基準に従って維持管理を行うよう、努力義務が課せられています(建築物における衛生的環境の確保に関する法律第4条3項)。
ビル管法で定められた建築物環境衛生管理基準と必要な対応
ビル・施設の環境を衛生的に保つための管理基準(建築物環境衛生管理基準)は、建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令第2条で定められています。
見やすい資料のかたちとしては、厚生労働省の「建築物環境衛生管理基準について」に表などを使ってきれいにまとめられています。
ここからは、法令や厚労省の資料などを踏まえつつ、建築物環境衛生管理基準と必要な対応について解説します。多くの方が気になるであろう箇所を抜粋して読みやすくしてあるので参考にしてください。
空気環境の調整
特定建築物の空気は、利用者が快適かつ安全に過ごせるように調整しなければなりません。以下、空気環境の基準や衛生上必要な対応について解説します。
空気調和設備を設けている場合の空気環境の基準
特定建築物の空気環境の調整は、空気調和設備(空調設備)を設置している場合と、機械換気設備を設置している場合で異なります。
空気調和設備を設置している場合の空気環境の基準は以下の通りです。
項目 | 基準値 |
---|---|
浮遊粉じんの量 | 1立方メートルあたり0.15 mg以下 |
一酸化炭素の含有率 | 100万分の6以下(=6ppm以下) |
二酸化炭素の含有率 | 100万分の1000以下(=1000 ppm以下) |
温度 | (1)18℃以上28℃以下 (2)居室の温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと |
相対湿度 | 40%以上70%以下 |
気流 | 0.5 m/秒以下 |
ホルムアルデヒドの量 | 1立方メートルあたり0.1 mg以下(=0.08 ppm以下) |
参考:建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令第2条1号
特定建築物で空気調和設備を設置している場合は、居室の空気環境が上記の基準におおむね適合するように空気を調整しなければなりません。
ちなみに、空気環境の基準は、令和4年4月1日に以下のように変更されました。上記の表が最新の基準で、以下が新旧の基準の対照表です。
令和4年3月31日以前 | 令和4年4月1日以降 | |
---|---|---|
一酸化炭素の含有率 | 100万分の10以下(=10 ppm以下) ※特例として外気がすでに10ppm以上ある場合には20ppm以下 | 100万分の6以下(=6ppm以下) ※特例に関する規定は廃止 |
温度 | 17℃以上28℃以下 | 18℃以上28℃以下 |
空気環境測定やホルムアルデヒド測定の詳細については下記の記事もご参照ください。
空気環境測定とは?義務と基準、実施者の持つ資格、料金などを解説!
ホルムアルデヒドの測定・検査とは?測定器や測定方法についても解説
機械換気設備を設けている場合の空気環境の基準
特定建築物で機械換気設備を設置している場合は、以下の基準におおむね適合するように空気環境を調整しなければなりません。
項目 | 基準値 |
---|---|
浮遊粉じんの量 | 1立方メートルあたり0.15 mg以下 |
一酸化炭素の含有率 | 100万分の6以下(=6ppm以下) |
二酸化炭素の含有率 | 100万分の1000以下(=1000 ppm以下) |
気流 | 0.5 m/秒以下 |
ホルムアルデヒドの量 | 1立方メートルあたり0.1 mg以下(=0.08 ppm以下) |
参考:建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令第2条1号
空調設備は空気の浄化・温度調節・湿度調節・流量調節のすべてができますが、ビル管法での機械換気設備は「空気を浄化し、その流量を調節して供給をすることができる設備」と定義されています。
つまり、機械換気設備の機能として温度調節・湿度調節の機能は想定されておらず、空気環境の基準からも温度と相対湿度の項目が除外されています。
空気調和設備に関する衛生上必要な対応
空調設備を設置している場合は、空調設備の汚れなどによって繁殖した病原体が居室の空気を汚染しないように必要な対応を取らなければなりません。
対応の具体的な中身は以下の通りです。
項目 | 対応内容 | 対応のタイミング |
---|---|---|
冷却塔及び加湿装置に供給する水 | 水道法第4条で規定される水質基準に適合させるための対応 | ― |
冷却塔、冷却水の水管の清掃 | 1年以内ごとに1回 | |
冷却塔、冷却水 | ・汚れの状況の点検 ※必要に応じて清掃と換水などを行う ・冷却塔、冷却水の水管の清掃 | ・使用開始時と使用期間中1ヵ月以内ごとに1回 (1ヵ月を超える期間使用しない場合を除く) ・1年以内ごとに1回 |
加湿装置 | ・汚れの状況の点検 ※必要に応じて清掃と換水などを行う ・清掃 | ・使用開始時と使用期間中1ヵ月以内ごとに1回 (1ヵ月を超える期間使用しない場合を除く) ・1年以内ごとに1回 |
空気調和設備内に設けられた排水受け | 汚れと閉塞の状況の点検 ※必要に応じて清掃と換水などを行う | 使用開始時と使用期間中1ヵ月以内ごとに1回 (1ヵ月を超える期間使用しない場合を除く) |
給水の管理・水質検査
飲料水や雑用水など、特定建築物で使われる水の管理や水質検査も重要です。以下、給水の管理や水質検査について解説します。
飲料水の管理
特定建築物では、安全な飲料水を提供するために以下の対応をする必要があります。
対応内容 | 対応のタイミング |
---|---|
ア 給水栓での水に含まれる遊離残留塩素の含有率を100万分の0.1(結合残留塩素の場合は、100万分の0.4)以上に保つようにすること ※供給する水が病原生物に著しく汚染されるおそれがある場合などは、給水栓の水に含まれる遊離残留塩素の含有率を100万分の0.2(結合残留塩素の場合は、100万分の1.5)以上にすること | 7日以内ごとに1回検査 |
イ 貯水槽の点検など、有害物・汚水などによって水が汚染されるのを防止するため必要な対応 | 1年以内ごとに1回清掃 |
ウ 飲料水の水質検査 | 定められた頻度 (「飲料水の水質検査」に記載) |
エ 給水栓での水の色・濁り・臭い・味などの状態によって供給する水の異常に気付いたときは、水質基準省令の表の上欄に書かれた事項のうち必要なものについて検査を行うこと | その都度 |
オ 飲料水に健康被害のおそれがあることを知った時の給水停止と関係者への周知 | ただちに |
飲料水の水質検査
水道または専用水道から供給する水のみを水源として飲料水を供給する場合は以下の頻度と項目で水質検査を行わなければなりません。
検査頻度 | 6ヶ月ごとに1回 | 1年ごとに1回 (6月1日~9月30日) |
---|---|---|
検査項目 | 一般細菌 大腸菌 鉛及びその化合物※ 亜硝酸態窒素 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 亜鉛及びその化合物※ 鉄及びその化合物※ 銅及びその化合物※ 塩化物イオン 蒸発残留物※ 有機物(全有機炭素(TOC)の量) pH値 味 臭気 色度 濁度 | シアン化物イオン及び塩化シアン 塩素酸 クロロ酢酸 クロロホルム ジクロロ酢酸 ジブロモクロロメタン 臭素酸 総トリハロメタン トリクロロ酢酸 ブロモジクロロメタン ブロモホルム ホルムアルデヒド |
(※が付いた項目は、水質検査を行って基準に適合していた場合は、次回の水質検査で検査を省略できます)
水道・専用水道以外の水や地下水を一部でも飲料水に使う場合は別途規定があります。
雑用水の管理
雨水や下水処理水などを雑用水(散水や噴水、栽培、清掃、水洗便所などに使う水)として使う場合は、衛生上必要な対応が定められています。詳しくは以下のページなどをご参照ください。
水道水を雑用水に用いる場合は、対応の必要はありません。
排水の管理
特定建築物では、排水設備にトラブルが生じて汚水が漏れるなどの事態が発生しないように、排水設備の清掃と補修を行う必要があります。
具体的には、排水設備の清掃を6ヶ月以内ごとに1回行うこととされています(建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則第4条の3)。
排水設備の一つとして、汚水槽清掃については下記の記事もご参照ください。
清掃など
日頃の清掃なども重要です。清掃に関しては以下のように定められています。
- 掃除を日常的に行うこと
- 大掃除を6ヵ月以内ごとに1回、定期的に、統一的に行うこと
参考:建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則第4条の5
ねずみ・害虫の防止・駆除
利用者の健康に悪影響を与えるのを防ぐため、ねずみ・害虫の防止・駆除も大切です。ねずみなどの防除については下記のように定められています。
対応内容 | 対応のタイミング |
ア ねずみなどの発生場所、生息場所と侵入経路・ねずみなどによる被害の状況について統一的に調査すること。 | 6ヵ月以内ごとに1回 |
イ アの調査結果を踏まえて、ねずみなどの発生を防ぐために必要な対応をすること | その都度 |
ウ ねずみなどの防除のため殺鼠剤や殺虫剤を使う場合は、薬機法の規定による承認を受けた医薬品か医薬部外品を使うこと | ― |
参考:建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則第4条の5
ねずみ・害虫の防除については下記の記事もご参照ください。
建築物衛生管理技術者とは
特定建築物の環境を衛生的に保つため、特定建築物の所有者等は、建築物環境衛生管理技術者を選任する必要があります。
建築物環境衛生管理技術者とは特定建築物の環境衛生の維持管理を監督できる国家資格を持つ人です。
建築物環境衛生管理技術者と所有者等の間には委任関係など何らかの法律上の関係があればよいことになっています。また、建築物環境衛生管理技術者が特定建築物に常駐する必要は必ずしもありません。
建築物衛生管理技術者の業務
建築物環境衛生管理技術者の業務には以下のものなどがあります。
- 管理業務計画の立案
- 管理業務の指揮監督
- 建築物環境衛生管理基準に関する測定または検査結果の評価
- 環境衛生上の維持管理に必要な各種調査の実施
また、建築物環境衛生管理技術者は特定建築物の環境衛生を維持・管理するために必要な場合は、特定建築物の維持管理について権原を持つ者(建築物維持管理権原者)に意見を述べることができます。
建築物維持管理権原者は建築物環境衛生管理技術者の意見を尊重しなければなりません。
ビル管法を守らないとどうなるか
管理している特定建築物の環境が、ビル管法で定められた建築物環境衛生管理基準に適合していないだけでは、ただちに行政措置や罰則の対象となることはありません。
しかし、建築物環境衛生管理基準を満たしておらず、その特定建築物の利用者の健康を損なうおそれが具体的に予見されるような場合には、都道府県知事から改善命令が出ることがあります。
また、緊急性が高い場合には、関係設備などの使用停止や使用制限が課せられることもあります。いずれにせよ、テナントや利用者には迷惑をかけ、ビル経営にとって打撃です。
ビル管法はそもそも利用者が快適かつ健康的にビルや施設を使えるようにするための法律なので、ビル管法を守らない状態だと利用者の健康を害してしまう可能性があります。
管理しているビルや施設を安全に利用してもらうためにも、ビル管法を遵守しましょう。
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