点検
12条点検とは?対象となる建築物などや点検内容を改正後の法律に沿って解説
建築基準法12条に定められたいわゆる「12条点検」はビルや施設の安全を守る上で重要であり、法律で義務づけられています。しかし、地方公共団体によって点検の対象となる建築物が違っていたり、平成28年に法律が改正されていたりして、12条点検の全体像は簡単には把握できません。
この記事では、ビルや施設の管理者の方に知っておいていただきたい12条点検の概要を改正後の法律に沿って基礎から解説します。
12条点検とは
12条点検とは、建築基準法12条で定められた、建築物などの安全性を確認する定期的な点検のことです。12条点検では、一定の条件を満たす建築物などで、以下の5つについて経年劣化などの状況を定期的に点検しなければなりません。
- 建築物
- 建築設備(給排水設備、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置)
- 防火設備
- 昇降機
- 準用工作物
このうち準用工作物とは、観光用エレベーター・エスカレーター、コースター、メリーゴーラウンド、観覧車などの遊戯施設をいいます。一般のビルや施設で関係があるのは建築物、建築設備、防火設備、昇降機の点検でしょう。
点検ができるのは専門技術がある有資格者に限られ、点検するだけでなく、点検結果を特定行政庁に報告する義務もあります。
12条点検の対象となる建築物など
まず、管理しているビルや施設が12条点検の対象かどうかということを把握しなければなりません。対象となる建築物などは、政令で一律に定められているものと、特定行政庁(建築主事を置く地方公共団体)が定めるものがあります。
すなわち、管理するビルや施設が12条点検の対象かどうかは、政令だけでなく、それぞれの地方公共団体が定めているものも確認しなければなりません。
政令で定められた対象となる建築物などについては、国土交通省の「建築基準法に基づく定期報告制度について」のページに見やすくまとまっています。
地方公共団体の定めに関しては、たとえば東京都であれば、東京都都市整備局が「定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」を整理しています。また、弊社が所在する愛知県であれば、愛知県の「定期報告制度」のページに対象となる建築物などがまとめられています。
都道府県名などと「12条点検」あるいは「定期報告制度」といったキーワードで検索すれば、対象となる建築物などの一覧が見つかります。まずは、ビルや施設が所在する地方の地方公共団体が運営しているサイトを確認してみましょう。
12条点検は誰ができるのか
では、法律で義務として定められている12条点検は誰ができるのでしょうか。12条点検ができるのは「専門技術がある有資格者」とされていますが、具体的には以下のような人たちです。
特定建築物定期調査(建築基準法12条第1項)
- 一級建築士
- 二級建築士
- 特定建築物調査員
建築設備定期検査(建築基準法12条第3項)
- 一級建築士
- 二級建築士
- 建築設備検査員
防火設備定期検査(建築基準法12条第3項)
- 一級建築士
- 二級建築士
- 防火設備検査員
昇降機定期検査(建築基準法第12条第3項)
- 一級建築士
- 二級建築士
- 昇降機等検査員
建築物調査員とは、12条点検などに関する講習で国土交通省令が定めるものの課程を修了した人かそれと同等以上の専門的知識及び能力を有すると国土交通大臣が認定した人で、建築物調査員資格者証の交付を受けている人のことをいいます。
建築物調査員の講習を受ける資格として実務経験などが問われるため、建築などを専門としていない一般の方が建築物調査員になるのは現実的ではありません。
12条点検をするには、周りに有資格者がいない限り基本的に外注が必要なのだと言えます。
12条点検の点検内容
12条点検で点検する内容のあらましを簡単にご紹介します。普段ビルや施設を管理する上でも気を付けておいていただきたい内容が含まれているので、この機会に確認してみてください。
建築物の12条点検の点検内容
建築物の12条点検では主に以下のような点検を行います。
点検項目 | 点検部位 | 点検内容 |
---|---|---|
敷地、地盤 |
地盤、敷地、通路、塀、擁壁 |
など |
建築物の外部 |
基礎、土台(木造に限る)、外壁 |
など |
屋上及び屋根 |
屋上面、屋上回り、屋根、機器及び工作物 |
など |
建築物の内部 |
防火区画、壁の室内に面する部分、床、天井 など |
など |
避難施設等 |
廊下、出入口、屋上広場、階段 など |
など |
その他 |
特殊な構造等、避雷設備、煙突 |
|
参照:建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件(平成20年3月10日国土交通省告示第282号)
建築物の12条点検では、建物自体だけでなく、敷地や地盤も点検の対象となります。日頃から建物周辺の敷地まで配慮した管理が必要です。
そのほか問題になりやすいのは、廊下や階段などを物品で塞いでしまっているケースです。火災が発生したときなどに速やかに避難するためにも、廊下や階段などに通行の支障となる物品を放置しないようにしましょう。
建築設備などの12条点検の点検内容
昇降機や遊戯施設などを除く建築設備などの12条点検では主に以下のような点検を行います。
点検項目 | 点検内容 |
---|---|
換気設備 |
|
排煙設備 |
|
非常用照明器具 |
など |
給排水設備 |
など |
参照:建築設備等(昇降機及び遊戯施設を除く。)の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法及び結果の判定基準並びに検査結果表を定める件(平成20年3月10日国土交通省告示第285号)
防火設備の12条点検の点検内容
防火設備の12条点検では主に以下のような点検を行います。
点検項目 | 点検内容 |
---|---|
防火扉 |
など |
防火シャッター |
など |
耐火クロスクリーン |
など |
ドレンチャー等 |
など |
参照:防火設備の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法及び結果の判定基準並びに検査結果表を定める件(平成28年5月2日国土交通省告示第723号)
昇降機の12条点検の点検内容
昇降機については、ビルや施設の昇降機は専門の業者に保守点検を依頼しているはずですが、その保守点検の内容に12条点検の内容も含まれていれば、昇降機について追加で12条点検を依頼する必要はありません。難解ですが、気になる方は昇降機の点検内容詳細はこちらを参照ください。
現在依頼している昇降機の点検内容がよくわからない場合は、業者に確認してみましょう。
12条点検の点検タイミング
12条点検の点検タイミングは、以下のように定められています。
項目 | 初回の点検 | 2回目以降の点検 |
---|---|---|
建築物 |
建築工事が完了して「検査済証」の交付を受けて6年以内 |
3年以内ごと |
建築設備 |
検査済証の交付を受けて2年以内 |
1年以内ごと |
防火設備 | ||
昇降機 |
報告をする時期に関しては、地方公共団体ごとに定めがあるので、ビルや施設が所在する地方公共団体のサイトを確認しましょう。概ね12条点検の対象となる建築物などの一覧と同じ場所に記載してあります。
2回目以降の12条点検については、ほとんどの場合、地方公共団体から案内が届きますが、案内が届かなかった場合も点検の義務があることに変わりはありません。念のため報告の時期を確認しておくのが安心です。
12条点検をしないとどうなるのか
法律で義務として定められている12条点検をしなかった場合どうなるのでしょうか?
まず大きな問題としては、建物や設備の老朽化などに気付けず、ビルや施設を利用する人の安全を確保できません。近年ビルや施設の火災で多数の死者が出るなど悲惨な事故も起きています。ビルや施設の管理者には適切な点検を行う責任があります。
また、点検報告を怠った場合には100万円以下の罰金が科せられることもあります。12条点検は必ず行いましょう。
12条点検の外注をするときのポイント
12条点検の外注をするときに気を付けておきたいポイントを解説します。
どこまでの工程に対して見積もりがされているのか確認する
業者に12条点検の外注をするときには、見積書を見ることになります。その際、工程のどこからどこまでを含んでその値段になっているのか、業者にしっかり確認するのがおすすめです。
というのも、12条点検は、点検するだけでなく、報告書を作成し、提出しなければなりません。点検から報告書の提出まで丸ごと依頼したいのに、点検だけの見積もりを出されたということがないように念のため確認しておきましょう。
実施内容別の検討ポイント
- 建築設備定期検査、防火設備定期検査については消防設備点検を実施している会社やビルの施設管理を行っている会社が推奨です。
- 排煙設備がある場合は、自動火災装置の操作が必要となる為、消防設備点検ができるかどうかを確認しましょう。
- 換気設備については、換気量測定を行います。換気をする為の設備、給排気ファンが運転しているかなどの判断が必要となるビルの施設管理行っている会社を探しましょう。
- 防火設備検査については、防火戸、防火シャッター等を動かす場合は、煙感知器との連動試験が必要となり、さらに自動火災装置の操作が必要となる為、消防設備点検ができる会社を探しましょう。
- 特定建築物定期調査については、10年に一度外壁診断が必要となる建物もありますので、外壁赤外線調査や外壁全面打診調査を実施している会社を探しましょう。
- また特定建築物定期調査で判明した修繕については、屋上防水や外壁修繕を実施している会社を探しましょう。
複数の業者から見積もりを取る
12条点検に限らず、外注全般に言えることですが、見積もりは複数の業者から取るのがおすすめです。業者によって価格に幅が出ますので、手間はかかってしまいますが、最初の業者決めではいくつか見積もりを取りましょう。
当社の強み・メリット
当社は12条点検が可能な建築物調査員を抱え、以下のような強みがあります。
ぜひ、コニックスにご相談ください。
コニックスへの問い合わせ
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