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レジオネラ菌の検査について
「入浴施設でレジオネラ菌が検出されました」というニュースを耳にすることがありますね。2023年3月には大きな問題が発覚して話題となりました。レジオネラ菌は設備管理において非常に重要な問題です。
命に関わる危険性があるためであり、実際に犠牲者も出ています。レジオネラ菌の検査は必ず行うべきであり、その知識を持つことが重要です。ここでは、レジオネラ菌の検査について解説しますので、ぜひ知識を身につけておきましょう。
レジオネラ菌とは
レジオネラ菌は、水や土の中によく存在している有害な菌です。自然の川や池、温泉など、様々なところに存在します。私たちがよく知っているようなヤクルトやヨーグルトに含まれるビフィズス菌とは異なり、レジオネラ菌は体内に入ると感染症であるレジオネラ症を引き起こす有害な菌です。
レジオネラ菌に感染するとどうなる?
レジオネラ菌に感染すると、2つの病気、レジオネラ肺炎とボンディアック熱が発症します。
いずれも治療には、医療機関で抗生物質の投与や適切な処置が行われます。
レジオネラ肺炎
レジオネラ肺炎は、感染してから2〜10日の潜伏期間を経て症状が表れます。初期症状としては全身の倦怠感、頭痛、悪寒、高熱、食欲不振、筋肉痛などがあります。病状が進むと、意識障害や呼吸困難、下痢、胸の激しい痛みが現れます。適切な治療を受けない場合、臓器の機能不全が起こり、命を落とすこともあります。
ポンティアック熱
ポンティアック熱は、レジオネラ肺炎とは異なり、感染後の潜伏期間は1〜2日ほどです。主な症状としては発熱、頭痛、全身の倦怠感、下痢、筋肉痛などの風邪に似た症状が表れます。多くの場合、数日で自然治癒し、症状が回復することが特徴です。
レジオネラ菌の感染者数について
レジオネラ菌は感染力が比較的弱いことと、日本の公衆衛生の向上もあり、健康な人で感染する人は多くはありません。そのため話題になることは少ないのですが、報告される件数は年々増加しており、注意が必要です。特に高齢者が感染するケースが多いです。
厚生労働省の発表によると、レジオネラ感染は7月に最も発生していることが分かっています。これは、梅雨時期の湿度の上昇や気温の上昇、そしてレジャーシーズンに入り、入浴施設の利用者が増えることが関係しています。これにより、レジオネラ菌に接触する機会が増え、感染リスクが高くなると考えられています。設備管理者だけでなく、一般の方々もこの知識を持っておく必要があります。
レジオネラの感染元および感染経路は?
レジオネラ菌は、主にエアロゾル(霧状の水)や汚染された水の吸引によって感染すると言われています。具体的には、直径5μm以下の汚染されたエアロゾルが口や鼻から侵入し、肺に入ることで感染が起こります。
なお、人から人へのレジオネラ菌の感染報告はありません。
ニュースでよく耳にするのは温泉施設ですが、ビルや病院、または住んでいるマンションやアパートなどの建物でもレジオネラ菌が検出されることがあります。その理由は、空調設備の冷却塔、加湿器、浴槽の循環水、給湯器、貯水槽など、建物内には多くの水に関わる設備が存在するためです。これらの設備が適切に衛生管理されていないと、レジオネラ菌が大量に増殖する可能性があります。
レジオネラ菌は熱や酸に強く、繁殖には20〜50度の温度が適しており、特に36度前後の温度が最も増殖しやすいとされています。そのため、水やお湯を使用する場所であれば、どこにでもレジオネラ菌が発生する可能性があると言えます。
レジオネラ菌の検査について
公衆浴場、旅館、社会福祉法人などの施設、プール、空調設備の冷却塔や給水・給湯設備、噴水などでは、検査が義務付けられています。
検査では、各設備の水を専用のポリ容器に必要な量だけ採取し、専用機関で一定期間培養します。その後、基準値を超えていないかどうかを確認します。注意点として、郵送で検体を送る場合、レジオネラ菌は死滅しないため、検査中に増殖する可能性があります。そのため、検体は4〜10度の温度で保存しながら輸送するのが理想的です。
レジオネラ菌の検査頻度の目安
レジオネラ菌の検査頻度は、「レジオネラ症防止指針第4版(財団法人ビル管理教育センター)」に基づいて設定されており、感染危険因子の点数化によって決定されます。なお、感染危険因子の点数化は法律の縛りではないため、病院や工場等、独自の基準を作る際にご活用ください。以下に点数の具体例を示します。
菌の増殖とエアロゾル化の要因(1~3点)
- 給湯水など:1点
- 浴槽水、シャワー水、水景用水など:2点
- 冷却塔水、循環式浴槽水など:3点
環境・吸入危険度(1~3点)
- 放的環境(屋外など):1点
- 閉鎖的環境(屋内など):2点
- エアロゾル吸入の危険が高い環境:3点
人の要因(1~3点)
- 健常人:1点
- 喫煙者、慢性呼吸器疾患患者、高齢者、乳児など:2点
- 臓器移植後の人、白血球減少患者、免疫不全患者など:3点
推奨される細菌検査の対応(スコアの合計点に基づく)
上記点数を考慮して、レジオネラ属菌の検査回数が決められます。
点数によって求められる対応は以下の通りです。
5点以下 | 常に設備の適切な維持管理に心がけ、必要に応じて細菌検査を実施する。 |
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6~7点 | 常に設備の適切な維持管理に心がけ、1年に最低1回の細菌検査を実施する。水系設備を再稼働する際にも細菌検査を行う。 |
8~9点 | 常に設備の適切な維持管理に心がけ、1年に最低2回の細菌検査を実施する水系設備を再稼働する際にも細菌検査を行う。 |
これらの対応に従って、レジオネラ菌に対する適切な検査を行うようにしましょう。
なお、特定建築物の冷却塔はリスクの高い時期、一般的には6~8月に1回検査します。
検査頻度を決める点数の具体例
イメージしやすいよう、以下に具体的な点数の例を示します。
一般ビル
一般ビルの場合、以下の要素を考慮します。
- 飲用給湯設備が存在する(1点)
- 空間が閉鎖的である(2点)
- 健常な人々が利用することが多い(1点)
これらの要素を合計すると、一般ビルは4点です。
したがって、設備管理を適切に行い、必要に応じて細菌検査を実施する必要があります。
浴場施設
浴場施設の場合は、以下の要素を考慮します。
- 循環式浴槽水を使用している(3点)
- 屋内にある(2点)
- 健常な人々が主に利用するが、高齢者も利用する可能性がある(2点)
これらの要素を合計すると、浴場施設では7点です。
そのため、設備管理を適切に行っている上で、年に一度は細菌検査を実施することが望ましいです。
大型病院
大型病院の場合は、以下の要素を考慮します。
- 冷却塔が病院屋上に存在する(3点)
- 閉鎖的な環境である(2点)
- 患者が利用する可能性がある(3点)
これらの要素を合計すると、大型病院では合計8点です。
病院では年に2回の細菌検査を実施することが望ましい、ということになります。
浴槽水は自治体の法令を要確認
一般的には、冷却水や給湯水に関しては上記のようなガイドラインが存在します。しかし、感染事故が多い循環式浴槽水については、一部の自治体では法令によって義務化されています。
厚生労働省が発表した「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」では、浴槽水について以下のように記載されています。
浴槽水は、少なくとも1年に1回以上、水質検査を行い、レジオネラ属菌に汚染されていないか否かを 確認すること。ただし、ろ過器を設置して浴槽水を毎日、完全に換えることなく使用する場合など浴槽水 がレジオネラ属菌に汚染される可能性が高い場合には、検査の頻度を高めること。
特に注意が必要なのは、浴槽水を完全に入れ替えずに使用する場合です。
「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」に検査回数の目安が示されています。
- 毎日完全換水型の浴槽: 1年に1回以上の検査が必要
- 連日使用型の浴槽:1年に2回以上の検査が必要(ただし、浴槽水の消毒が塩素消毒ではない場合は、1年に4回以上の検査が必要)
浴槽水のタイプによって、検査を行う頻度が異なりますので注意が必要です。
ビルの管理におけるレジオネラ感染の防止対策について
レジオネラ感染を予防するためには、薬剤による消毒はもちろん重要ですが、水質管理も非常に重要です。
一般的に、レジオネラ菌は20〜50℃の範囲で繁殖し、人の体温に近い36℃前後で最もよく増殖します。しかし、熱には弱く、55度以上では死滅します。
そのため、防止対策として以下のことが重要です。
- 水の温度を20℃以下に保つことが望ましい
- 給湯水の温度が55℃以上であること
ビルの設備管理では、各設備の水の温度を確認しましょう。もし、水の温度が55℃以下であれば、温度を上げるように調整しましょう。
また、浴槽の配管のぬめりには注意が必要です。ぬめりはバイオフィルムと呼ばれ、レジオネラ菌の繁殖場所となります。
ぬめりに注意すべきもう一つの理由は、塩素などの消毒薬が壁面や配管全体に行き渡らず、微生物が繁殖してしまうことです。そのため、定期的な清掃を行うことが重要です。
屋上の冷却塔に注意!
一部の建物では、屋上に冷却塔が設置されており、設備管理者以外でも柵の近くに立つことができます。
近くにいると意外にも水蒸気に触れることができるため、注意が必要です。夏のシーズンでは、解放された屋上で水蒸気を浴びる人もいます。
このような行為は非常に危険のため注意が必要です。もしもその施設からレジオネラ菌が検出された場合、感染している可能性が非常に高くなります。
一般の人には水蒸気がレジオネラ菌に感染するリスクが分からないため、注意の札を立てるといった対策が必要です。
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