業務用エアコン
業務用エアコンの点検義務について解説!義務化までの歴史や点検内容とは?
快適な職場環境を維持するには、業務用エアコンが欠かせません。
その業務用エアコンに関して、フロン排出抑制法の施行により所有者には点検が義務化されました。しかし、業務用エアコンの点検についてまだよくわかっていない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では業務用エアコンの点検について詳しく解説していきます。
この記事を読むことで業務用エアコンの点検がなぜ義務化されることになったのか、点検の内容や、違反した場合の罰則について理解できるようになるはずです。
業務用エアコンの点検が義務化された歴史について
なぜ点検が義務化されたのかを知ることはとても重要です。背景・歴史を知ることで点検を行なわなければいけない理由がわかると、後ほど紹介する点検内容や怠った場合の罰則について理解が深まりやすくなるでしょう。
エアコンに使われるフロンガスとは
エアコンにはフロンガスが使われています。
フロンは1928年に開発され、燃えにくく、人に無害といった優れた性質を持っています。このフロンガスが使われていた理由は空気中の熱を運ぶ役割を持つ冷媒としてとても優れていたためでした。当時の冷蔵庫の冷媒はアンモニアが使われていたのですが危険性が高かったのです。このときのフロンの発明は大歓迎され、広く使用されるようになりました。
なぜフロンは地球環境によくないのか
便利なフロンですが、温暖化を引き起こしたり、地球上空のオゾン層を破壊するなど地球環境によくないことが1980年代から明らかになってきました。
オゾン層は太陽から放たれる紫外線を吸収してくれるため、気候の形成に大きい役割を果たしてくれています。
フロンがオゾン層に悪影響を与えるのは、先述したように分解しにくい性質を持っていることから、長い時間をかけて上空に向かい、オゾン層を破壊するためです。分解しにくいという長所が環境破壊へと繋がってしまったのです。結果としてオゾン層はフロンによって穴が空いてしまい、地球環境に悪影響を及ぼしてしまいました。この穴はオゾンホールと呼ばれています。
現在では後ほど解説するフロン抑制の動きによりオゾン層の穴の拡大傾向はなくなっており、数十年後にはもとに戻るという予測もされていますが、それに向けて引き続き対策が必要な状況となっています。
参照元:平成30年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書について(環境省)
フロン排出抑制法とは
フロンが地球環境に悪影響を与えるということが判明してから、世界各国ではフロンを抑える動きが広がります。日本でも同様に2001年にフロン抑制に関する法律「フロン回収・破壊法」が制定されました。2015年には内容の見直しから「フロン排出抑制法」に名称が変更され、2020年4月からは更に規制が強化されました。
フロンガスは冷蔵庫やエアコンの内部に充填されているため、そのまま廃棄してしまうと、空気中に放出されてしまいます。それだけでなくエアコンの劣化といった理由でも漏れ出す恐れがあります。このことから厳密に業務用エアコンに関する管理を行うことでフロンによる悪影響を抑制できるように法律が定められました。このような背景から私たちには業務用エアコンの点検が義務化されることになったのです。
フロン排出抑制法について詳しくは次の記事を参照ください。
フロン排出抑制法について解説!業務用エアコン設置で知っておく必要あり!
対象となる機器及び対象者
ここまでの解説で業務用エアコンの点検が義務化された背景が理解できたと思います。それでは実際にどのような機器が対象で、誰が点検しなければならないのかを解説いたします。
対象となる機器とは?
点検が必要な対象機器は「第一種特定製品」となります。第一種特定製品とは、冷媒としてフロンガスが充填されている業務用エアコンなどを指します。
具体的な例としてはオフィスや病院、飲食店といった場所に天井に埋め込まれているエアコンがあります。このようなエアコンは業務用エアコンとなります。
管理している業務用エアコンが対象機器かどうかは実際に室外機を確認してみるといいでしょう。点検の対象となる機器の場合、「第一種特定製品」というシールが貼られています。なお、平成14年4月以前の機器にはシールが貼られていませんがフロンガスが充填されている場合は対象となりますので気をつけましょう。
一方で家庭用のルームエアコンやカーエアコンは対象外となります。
誰が点検するのか?
点検を行わなければいけないのは「第一種特定製品の管理者」とされています。
この言葉ではわかりにくいので「持ち主」と考えればイメージがつきやすいでしょう。
レンタルの場合は、貸してくれる業者が管理者となるケースが通常ですが、リースの場合は長期間となる為、借りている側が管理者となる場合があります。契約書を確認して、管理者は誰であるのか確認しましょう。
また、ビルやテナントの業務用エアコンの場合は建物のオーナーが点検することになります。
業務用エアコンは様々な場所で使用される為、管理者は誰なのか?とイメージしにくいですが、基本的には「持ち主」が点検する義務が生じると考えて良いでしょう。
業務用エアコンの点検内容
業務用エアコンの点検には2種類あります。全ての業務用エアコンに対して行う簡易点検と、一定以上の規模の場合には、それに加えての定期点検が必要となります。
簡易点検は管理者自身、定期点検は専門業者に依頼して行います。
簡易点検
簡易点検は3ヶ月に1回以上、管理者自身による点検を行う必要があります。
簡易点検の内容を挙げます。
- 室外機から異常振動や運転音がしないか?
- 熱交換機は油の滲みや傷やさび、腐食がされていないか?
- 室外機の外観や下部に傷やさび、腐食がされていないか?
- リモコンに異常コードがないか?
- 異常音がないか?
- 冷え・暖まりに異常がないか?
以上の点検を行い、異常や不安を感じた場合は専門業者に依頼しましょう。
定期点検
定期点検の頻度は、エアコンの規模(圧縮機の定格出力)によって次の通りに変わります。
- 50kw以上は1年に1回以上
- 7.5kw以上〜50kw未満は3年に1回以上
つまり、7.5kw以上の場合は簡易点検に加えて定期点検を行う必要があります。
エアコンの規模は室外機のシールで確認することができます。
定期点検は「十分な知見を有する者」、つまり有資格者が行うことになります。代表的な資格は第一種・第二種冷媒フロン取扱技術者となります。
専門業者に依頼をして、定期点検を行いましょう。
定期点検では簡易点検と同じように目視点検を行い、さらに電流・電圧・温度・圧力を測り、基準値とずれていないか確認をします。
確認を進めていくうちにフロンの漏えいの疑いがある場合は、漏洩箇所を特定します。例えば、配管の接続部にガス漏れ検知スプレー等で検知液を塗布し、検知泡の有無について確認します。定期点検の結果によっては修理を行う必要が出てくるでしょう。
管理者が点検以外にも行うこと
管理者には点検以外にも行わなければならないことがあり、それらの内容も把握しておく必要があります。ここでは点検以外にも行わなければならない項目を解説していきます。
適切な場所への設置
管理者は業務用エアコンの点検や、修理ができるように空間を確保する必要があります。また、機器周辺の定期的な清掃をし、使用環境維持に努めなければなりません。
記録の保管
対象となる機器の点検や修理といった履歴を保存しておく必要があります。
なお、2020年の改正からは機器を廃棄した後も履歴を3年間保存することが義務付けられました。
フロンガス漏えいへの対処
フロンガスの漏えいを発見した際に、修理をしないままフロンガスを充填することは禁止されており、速やかに漏えい箇所を特定して、修理をする必要があります。また、1年間のフロンの漏えい量が一定以上超えた場合、特定漏えい者となり、フロンの漏えい量を報告しなければなりません。
機器の廃棄時にはフロンの回収を徹底
機器を廃棄する際には充填されているフロンガスを回収業者に引き渡す必要があります。フロン回収が徹底されていないまま破棄すると、後ほど解説する罰則に適用され、即座に罰金が科せられてしまいます。
違反をしてしまった場合の罰則
2020年の法改正により、違反者に対する罰則が強化されました。
例えば3ヶ月に1回の点検を怠ったときや、機器の廃棄の時にフロン回収を行わないなどの場合は50万以下の罰金になることがあります。
以下に代表的な罰則の例を挙げます。
- フロン類をみだりに放出した場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 機器の点検・漏えいの対処、記録の保管の「判断基準」に違反した場合は50万以下の罰金
- 機器の使用・廃棄などに関する義務について都道府県知事の命令に違反した場合は50万円以下の罰金
- 冷媒を回収せずに機器を廃棄した場合は、50万円以下の罰金
- 回収依頼書もしくは委託確認書を交付せず廃棄した場合、書類の保存を怠った場合は、30万円以下の罰金
- 引取証明書(写し)の保存を怠った場合には、30万円以下の罰金
- 算定漏えい量の未報告・虚偽報告の場合は10万円以下の過料(罰金ではない)
エアコン点検は私たちが過ごす環境にとても大事なこと
この記事ではフロンによる地球環境の影響を抑えるため、業務用エアコンは定期的な点検が必要であることを解説してきました。
しかし、点検は地球のためだけでなく、私たちが過ごす環境の維持にも不可欠です。なぜなら、点検を怠っていればエアコンの故障が発生することになり、予期せぬ損害が起きてしまう可能性があるからです。
2018年に病院のエアコン故障による熱中症の疑いで、高齢者が亡くなってしまう事故が起きました。この事故はエアコンの故障と死亡に因果関係の疑いがあると判断され、注目を集めた事故でもありました。どの事業者でも設備投資に限界があり、最善最良の状態にするのはなかなか難しいかもしれないでしょう。更に当時は「エアコン修理に1ヶ月ほどかかる状況だった」とのことでした。実は故障してから修理されるまで時間がかかるのはよく起こり得ることなのです。ですが、定期的に点検を行い、大きな故障になる前に対策をしておけば最悪の状況は免れたかもしれません。
また、飲食店の場合などではエアコンの故障は快適な環境を維持できず、従業員に大きな負担をかけることになります。点検を怠っていると、結果として過ごす人々の健康にも影響を及ぼしてしまうのです。このように業務用エアコンの定期点検はフロン抑制のためだけではない、ということを意識するようにしましょう。
まとめ
業務用エアコン点検が義務化された背景として、エアコンに使用されているフロンガスが地球環境に悪影響を与えることから、抑制する目的としてフロン排出抑制法が制定されました。
業務用エアコンの点検には簡易点検と定期点検の2種類があり、一定の規模以上のエアコンは専門業者に依頼をして定期点検を行う必要があります。
点検を怠った場合は罰則が適用されてしまう恐れがあるでしょう。
また、日常的にエアコンについて管理することは地球環境のためだけでなく、職場環境の維持につながり、従業員の健康にも繋がります。
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